感想『蓮見律子の推理交響楽』音楽×ミステリーが奏でる温かな物語

 

 蓮見律子は作曲家で、大金持ちで、控えめに言って傲岸不遜な人だった。例えばモーツァルトについて話していたときのことだ。

「モーツァルトのミドルネームってたしか『神に愛された』って意味ですよね。やっぱり音楽の神様に愛されていたんですかね」

 僕が何気なく訊ねると律子さんはしれっと答えた。

「モーツァルトを愛した憶えはないけど?」

 まあ、こういう人である。

蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ p8より引用

 

開幕1ページ目から物々しい口調で語り部を呆れさせるヒロイン・蓮見律子。対する語り部はヒロインのお世話係となっている、ブロガーにして作詞を務めることになった葉山理久央。

このホームズとワトソンのコンビが織りなす 音楽 × ミステリー。

 

これがたまらなく面白い。

 

 

 

巴瀬春哉
こんにちは、巴瀬春哉(@tomose_shunya)です。

今回は『蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ』の感想となっております。

音楽を絡めたミステリー小説なんですが、その時々で出る単語が秀逸で心踊ります。

名門音楽一家の放火殺人、防音の密室、100年の謎、左手のための旋律。

音楽についての知識は全くありませんでしたが、ここまで並べられて燃えないわけがありません。

王道にして青春を匂わせる煽り文で思わず手に取ってしまいました。あと、表紙が素晴らしい。

蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ【電子書籍】[ 杉井光 ]

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あらすじ

 

彼女には、真実を隠す音楽が聞こえる。

防音の密室、殺人。左手のための旋律100年の謎。

ミステリと音楽が織りなす交響楽。

大学を留年し、ブログで小銭を稼ぎ引きこもり生活を送る葉山理久央。天才作曲家・蓮見律子の前に引きずり出された葉山は作詞を依頼される。彼女に紡げない「詩情」を彼の文章から読み取ったという。早々辞退するも数日後、若き演奏家の本城湊人出会い、名門音楽一家を巡る放火殺人事件に遭遇する。謎は聞こえるが真実は見えないと豪語する律子の調査に巻き込まれるが……。

『蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ』あらすじ より引用

 

杉井光先生の真骨頂 音楽×ミステリー

 

杉井光といえば、『さよなら、ピアノソナタ』『神様のメモ帳』が代表作として挙げられる。

音楽をストーリーに絡めることが得意で、大胆なストーリーと緻密な文章が魅力的。

『ピアノソナタ』でもガラクタの山の中でピアノを弾くという幻想的なシーンがあったのだが、それと同様に美しさで勝負するシーンというものが作中にあり、大変良かった。シンプルであり、幼子が見る夢みたいな、そんな描写。

他にも、強気な女性(少女)+それに従う主人公といった組み合わせが多く、それでいて常に対等な関係で成り立っているので、その関係性も高いポイント。

ただ探偵がカッコよく推理を披露しておしまいという王道な展開も良いが、この作品はその先にまで目を向けたストーリーとなっていた。

まず、蓮見律子自身は「詩情」を持ち合わせないため、作詞を理久央に依頼。詩情とはつまり人の感情を揺さぶるセンス−−感情の動きを知るということであり、律子自体は事件の実態究明をすることができても、犯人の動機までは理解することができない。

ということもあり、この作品は、

律子=事件のトリックを暴く

理久央=犯人の動機を理解する

という役割に分かれている。

ヒロインの蓮見律子がミステリーを解決するだけで終わるのではなく、ワトソンの役割を担う主人公・葉山理久央が自分の考え、言葉で真実にたどり着く。そこがまた熱い。

この作品はミステリーではなく、その後の動機にかなり重きを置いている。早い段階で律子が事件を解決するが、それとは別に犯人の動機が不明。理久央の奮闘(というか詩情)によって動機にたどり着くが、その真実がまた美しい。

作中、言葉や詩という単語が頻繁に飛び交うが、それらすべてが真実を知った時に納得したり、感動したりすることができる。

誰もが傷ついているが、誰もが救われるそんなお話であったのかな、と思う。

たとえ蛇足であっても続編が読みたくなるほど面白い作品。

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巴瀬 春哉(ともせ しゅんや) 文芸とライトノベルが好き。 宮城県生まれ東京在住。 本には詳しくないが、本が好き。おもに文芸とライトノベルのことをブログに書いている。 ご連絡は「お問い合わせ」からお願いします。