『英国幻視の少年たち』が面白い! イギリスが舞台の現代ファンタジー小説を紹介

 

こんにちわ、巴瀬春哉(@tomosesese)です。

本記事は、「巴瀬がおすすめするイチオシ小説の紹介」です。

ジャンルは、現代ファンタジーの大衆向け小説。

妖精、精霊、ゴーストが息づくイギリスの地にて、日本人の主人公がそれらとともに暮らすストーリーです。

ほのぼのでありつつ、登場人物に焦点を当てた過去や願いを魅せるお話を紹介していきます!

 

英国幻視の少年たち

 

第2回「このライトノベルがすごい!」大賞優秀賞受賞作『R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く』でデビューした深沢仁先生の現代ファンタジー作品。

英国幻視の少年たち』の紹介です!

妖精、精霊、ゴーストなどの伝承の存在が息づくイギリスを舞台に、日本人の青年と怪奇現象を解決する青年の2人を描いたもの。

〈英国幻視〉を簡単に説明すると、

★舞台は現代のイギリス

★ゴースト、妖精、精霊など伝承上の存在が登場する

★霊感を持つ日本留学生とオカルトを解決する専門家の青年がメイン

★不器用な青年2人が紡ぐ、人情あふれるほんのり哀しいストーリー

 

 

あらすじ

 

イギリスのウィッツバリーという地で叔母とともに住んでいる皆川海《カイ》は、ある日道に迷ってしまう。目の前に広がる放牧された羊たちを眺めながら途方に暮れていたカイの元に現れたのは、赤毛の少年 ランス・ファーロング。彼は、ウィッツバリーを担当地区として持つ英国特別幻想取締報告局の局員――つまり、オカルトの専門家だった。妖精に惑わされたせいで延々と道に迷っていたことを見抜いたランスは、その知識でカイを助ける。そこからカイのウィッツバリーでの奇妙な生活が始まった――

 

以下、各巻あらすじ

第1巻 副題:ファンタズニック

ウィッツバリー編。

カイのウィッツバリーでの生活を描いた話。カイとランスの出会い。カイが世話になっている叔母・マリコとの生活。日本では見ることのなかった妖精、精霊、吸血鬼といった幻想的生命体の数々。ランスに想いを寄せる精霊・シンシアと出逢うカイ。そして、見えないはずの存在を見ないためにイギリスへと留学してきたカイだったが、彼のまえに後輩だったアヤ・ミシバが姿を現す――

カイとランスの始まりの第1巻。

第2巻 副題:ミッドサマー・イブ

妖精の国編。

ある事件がきっかけで共に暮らすことになったカイとランス。夏至が近くなるにつれて、幻想的生命体が活発になる。ランスがその対応に追われる中、ウィッツバリーに臨時で派遣される二人の若い報告局員。彼らは幼い頃からランスを毛嫌いしている者たちだった。そんな中、報告局に勤める局長のハイドとエルフのエドがカイの前に現れ、ランスとともに妖精の国へと赴くことを命じる――

カイとランスのすれ違いを描いた第2巻。

第3巻 副題:グリム・リーパー

ロンドン編。

カイの前に現れ幽霊である後輩 アヤ・ミシバの行く先を調べるためにロンドンへと訪れたカイとランス。しかし、ロンドンでは幽霊狩りをする死神の噂が流れていた。ミシバが犠牲になっていないかと焦るカイ。ミシバの居場所を突き止めるべく、カイとランスは幽霊のパーティーが開かれるという会場へと足を運ぶことになる。夜のロンドンで出会う、カイの前からいなくなった人たち――

別れと喪失の第3話。

第4話 副題:ウィール・オブ・フォーチュン

回想編。

マリコが過去、どういった経緯でウィッツバリーへと移り住んだのか。カイが訪れた妖精の国で出会ったバーンズという人物は何者なのか。そこに隠された想いと出来事。

報告局に勤めるエルフのエド。局長ハイドの右腕である彼が人間界で報告局に勤めているのか。エルフの森からロンドンの報告局に訪れ、ハイドに仕えるまでのお話。

ウィッツバリーを担当地区としている若き報告局員・ランス。歪んだ幼少期の経験を持つ彼が、その消極的な性格に落ち着いたわけは何か。悲哀に満ちたその過去のお話。

過去から今へと繋がる第4巻。

第5巻 副題:ブラッド・オーヴァ・ウォーター

ウィッツバリー騒動編。

マリコの過去を知り、ロンドンからウィッツバリーへと帰ったカイ。東洋人で第二の目(霊感)を持つこと、さらにロンドンの事件で報告局上層部から注目される存在となった。エドに、ロンドンにある報告局本部へと引っ越しすることを提案される。引っ越しを巡るランスとの言い争い、カイを蝕む悪夢、ある報告局員からの届け物、不審な訪問者。変わる環境と変わらない想い。イギリスでの経験を経て、カイが出す答えとは――

己の居場所を確かめる第5巻。

第6巻 副題:フェアリー・ライド

完結編。

ウィッツバリーで報告局の仕事を学び始めるカイ。だが、ある日の晩、ランスの身に異変が起こる。そして、ランスに想いを寄せる精霊・シンシアがいなくなったことを知る。ランスがカイに隠していたこととは? さらにカイとランスはふたたび妖精の国へと赴くことになる。マリコとシンシア、ランス、カイの行く末とは――

終わりと祝福の最終巻。

 

〈英国幻視〉のここが見どころ!

 

カイとランス、2人の粋な会話

カイとランス、淡々とした2人の粋な会話が魅力の一つです。

たとえば、作中で穴の空いたリングのような石にはどういう意味があるのか問う場面があります。

「(中略)なんなんだ、それ」

「穴の空いた石だ」

「俺の知らないことを教えてくれないか」

引用:英国幻視の少年たち ミッドサマー・イブ

 

アメリカンジョークに近い、日常で使われる2人のコミュニケーション。これがなんとも癖になります。あまり起伏のないテンションで行われるので、なかなかどうして笑っちゃいます。

コメディのようにオーバーなリアクションや物言いに頼らず、日常会話で笑いをさそい、場を和ませる。それを何気ない生活の1場面だったり、シリアスから脱するための手法だったり、様々な場面で垣間見えるジョークの使いどころが注目のポイントです。

こんな淡々としてるのにめっちゃポップな感じがする不思議な感覚になります。

 

イギリスの伝承の興味深さ

 

文化様式の違いからか、日本ではあまり見かけることがないイギリスの伝承が本作では多く出てきます。

たとえば、『精霊は鉄を恐れる』『妖精は人を道に迷わせる』など。

1巻冒頭でも、カイが妖精のいたずらで道に迷うシーンがあります。そこに居合わせたランスが「服を裏表反対に着るように」と助言をします。

このように妖精に惑わされたら服を反対に着るという伝承を使用したものなど、日本ではまず聞かない伝承がストーリーでは見ることができます。

そのほかにも様々な伝承や迷信が登場し、時にシュールや笑いを演出します。

 

あの世とこの世を繋ぐメッセンジャー

 

霊感を持つ。それは死者と意思疎通できるということ。

登場人物は皆、『第ニの眼』と呼ばれる霊感を持っているため、生きていながら死者と意思疎通を図ることができます。

ほかにも、妖精、精霊などといった存在ともコンタクトを取ることができ、物語に大きくかかわってきます。

自ら死を迎えてゴーストとなったカイの後輩 アヤ・ミシバ。

カイは、「見えること」や「自分の周囲につきまとう噂」に嫌気が差してイギリスへと留学をします。

だが、そこでも出会ってしまった「見えるはずのないモノ」たち。

日本よりもそういった存在が黙認されているイギリスでカイは多少の居心地の良さを覚えるようになるが、それでもどんな時でも死の影が付きまとってしまいます。

テンションの高い子どものゴーストや精霊が仮初めの命を吹き込んだキツネのような生き物。

人と同じく、限られた命で2度めの生を謳歌する存在を前に、カイは置いてきたはずの大切なものを思います。

生者に紡ぐ死者からのメッセージ。

専門家であるランスの仕事にくっついていくうちに、その役割が自分にも巡ってくる。

今もなお続く想いとゴーストとなって現れる後輩。

口下手なカイがあの時伝えられなかった想いを伝え、きちんとした別れを果たす。そんな話がなんともエモいです。

 

カイは、家事全般ができて特に料理を作ることが得意という器用な印象だが、コミュニケーションはどこか不器用。

対して、ランスは身体が弱くすぐ体調を崩し、無口で対人コミュニケーションが苦手、さらにケンカもしたことがない。

そんな不器用同士の2人が織りなす物語です。

全6巻完結済みなので、安心して読むことができます!

 

 

ABOUTこの記事をかいた人

巴瀬 春哉(ともせ しゅんや) 文芸とサブカルチャーが好き。 宮城県生まれ東京在住の22歳。 本には詳しくないが、本は好き。おもに映画、漫画、ゲーム、小説のことをブログに書いている。 ご連絡はお問い合わせからお願いします。